横浜地方裁判所 昭和44年(ワ)1227号 判決
以下は、判例タイムズに掲載された記事をそのまま収録しています。オリジナルの判決文ではありません。
<編注>(本判決の認定した事故態様)
被告の雇人Aは、昭和四一年八月七日午前零時頃、被告保有の自家用貨物自動車を藤沢市内の街路灯もない暗闇の路上に駐車させていたが、右自動車は、右側後部反射鏡が泥のため反射鏡としての性能を欠いた状態であつたところ、右道路上を後方より自動二輪車を運転進行してきた被害者Bが右自動車後部に接触、路上に転倒し死亡した。(なお本件は被告が公示送達による呼出を受けた事件であることもあつてか、右駐車に至る経過は明らかにされていない。)
〔判決理由〕二 道路運送車両法第四十一条の定めるところによれば「自動車は、その装置たる反射器について、運輸省令で定める保安上の技術基準に適合するものでなければ、運行の用に供してはならない。」のであり、本件事故当時施行中の当該運輸省令(昭和二六年第七十四号、改正昭和四一年第一七号)所定の道路運送車両の保安基準第三十八条には原告両名主張のとおりの定めがあり、ここにいう「運行」とは、人又は物品を運送するとしないとにかかわらず、道路運送車両を当該装置の用い方に従い用いること(道路以外の場所のみにおいて用いることを除く。)をいう(道路運送車両法第二条第五項)(なお、自動車損害賠償保障法第二条第二項参照)のであるから停車は固より駐車をも含むものと解すべきであり自動車の駐車も亦当該自動車の運行供用の概念に入るものであるから、被告は本件貨物自動車の保有者として自動車損害賠償保障法第二条第三項、第三条本文、第四条、民法第七百十一条に則り本件人身事故(死亡)によつて生じた物心両面の損害を賠償する責任がある。
三 されば、被告は原告両名に対しそれぞれ以上の損害合計金三、一〇八、五七一円宛を賠償すべき責任があるところ、本件事故は真夜中に発生したものであつて、本件に顕われた全立証に徴するも現場の状況等詳細な点を確認するに由ないが、しかし訴外和夫がオートバイ(ホンダ)を運転するに際し前照灯を点灯していたであろうことは推認するに難くなく、その前照灯に欠陥がなく正常に作動していたものとすれば夜間前方百メートルの距離にある交通上の障害物を確認できる性能を有する筈である(本件事故当時施行中の運輸省令(昭和二六年第七四号、改正昭和四一年第一七号)所定の道路運送車両の保安基準三十三の1、三十二の2)から、被告車の後部反射器が汚損してその用をなさなかつたとしても、同訴外人は前方注視義務を怠らない以上同車の手前百メートル以内の距離に入つて当然同車の存在を確認し停車又は避譲することに因り事故を未然に防止し得たであろうことが窺えるのであつて、これなくして遂に本件死亡事故を惹起したことは、逆論すれば、同人が停車又は避譲できない程度のかなりの高速を出していたか、前方注視義務を怠つていたか又はなんらかの原因により前照灯に故障があつたかのいずれかに基因するものであり、この点は同人の過失として本件損害の数額の算定について斟酌されねばならず、この過失の割合は7/10が相当と判定される。(若尾元)